日本語教育の歴史

今年の夏は武田珂代子著「太平洋戦争 日本語諜報線」(ちくま新書 2018.8.10)を読んでおりました。先の大戦での情報将校については二世の体験を中心に出版物やテレビ番組で扱われることが多くなりましたが、全体像を把握するために本書が刊行されたことは有難いことでした。

全体を通して日本語教育が大きな柱となっているのですが、特に米軍における語学学校と二世語学兵に関する記述が中心となる第一章では長沼直兄さんと、彼の『標準日本語讀本』、この《ナガヌマ・リーダ》に学んだというキーンさんに言及されています。

あっ、と思い第一章の参考文献を参照すると確かに河路由佳さんの『日本語学習・教育の歴史』が挙げられていました。浅海はキーンさんのこと、長沼直兄のことを河路由佳さんのお仕事で学んだものですから、ここでお名前を拝見することが当然のような気持ちがしました。

その河路由佳さんが9月中にNHK第二ラジオの「私の日本語辞典」という番組に出演されていました。幸い、ストリーミング放送で過去の放送分を聴くことが出来ます(期間限定)。大変興味深く拝聴致しました。(長沼直兄さんの業績については第四回の放送で特に詳しく語られています)

「外国人の日本語学習の歴史をたどる」と題されたシリーズ、第一回から拝聴して認識を新たにしたのですが、日本語教育というものは中国や朝鮮、諸外国との接触から始まったものであり、日本の歴史とともにあったのですね。今から考えれば当然のことなのですが、自分の興味が先の大戦前後であったために認識が限定されていました。

遡って語られるエピソードに数々の超人的な学習者、研究者、教育者が登場し驚嘆しました。限られた情報のなかで日本を知ろう、教えようというこういった人物がいたことは本当にありがたいことと思います。浅海の乏しい知識ではこういったエピソードにも、たとえばドナルド・キーンさんの逸話などを投影してしまうのですが、本来はもっと過去の出来事から眺めるべきなのでしょうね。

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