「雷撃深度一九・五」/「真夏のオリオン」

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「雷撃深度一九・五」という日本の潜水艦と巡洋艦巡洋艦インディアナポリス号の戦いを題材にした小説が映画化されることを知りました。相変わらず情報にうとくて。

前にもインディアナポリス号について書いたことがあったかと思いますが、重ねて書かせてください。この事件とハワイには関わりがあるのです。インディアナポリス号のマクベイ艦長の遺児がハワイに生きていたのです。

このインディアナポリス号の悲劇は一度は映画「ジョーズ」の中で語られることにより多くの人に強い印象を残したのですが、いつしか忘れていきました。11歳の少年、ハンター・スコットもある日、「ジョーズ」で語られた巡洋艦の沈没とその後の鮫の恐怖のエピソードに好奇心を書き立てられます。そして、研究発表のテーマとして、この悲劇と、マクベイ艦長の物語を調べていきます。第二次世界大戦中、なぜ、マクベイ艦長だけが撃沈の責任を問われることになったのか。

一人の少年の疑問はやがてマスコミの注目を集めることとなります。それまで部下の兵士達がいくら政治家などに働きかけても成果が無かったのにも関わらず、少年の調査がきっかけに名誉回復への動きが始まります。

この過程については以下の本に詳しく紹介されています。

少年が救った提督の名誉―原爆運搬艦インディアナポリスの悲劇

本書のなかで、マクベイ艦長の遺児がスコット少年をハワイに招待したことが紹介されます。その遺児の名前はキモ・マクベイ。ハワイのショービジネスを語る上で無視の出来ないビッグ・ネームの一人です。なにしろドン・ホーのマネージャーだったんですからね。加えて、デューク・カハナモクの名前をブランドとして展開したやり手のビジネスマンでした。(このことは例えば『エディ・ウッド・ゴー!!―ハワイの海に消えた永遠の英雄伝説「エディ・アイカウ物語」』という本などでも触れられています。サーフィンの歴史について調べると必ずぶつかる名前の一つです。)

なぜ、マクベイ艦長の遺児がハワイに居るのか。それは艦長がハワイ生まれの女性と結婚していたからです。その女性とはキーナウ・ワイルダー。クアロア牧場の前身、クアロア・プランテーションを起こしたサミュエル・ワイルダーの末裔であり、ドクター・ジャッドの血筋の一人でもあります。

Fatal Voyage: The Sinking of the Uss Indianapolis

インディアナポリスの悲劇に関する本で、艦長とハワイとの関わりを詳しく紹介しているものはあまり無いのですが、上に掲げる「Fatal Voyage: The Sinking of the USS Indianapolis」では比較的詳しく、そのことを紹介しています。それもそのはず、著者はキモ・マクベイとその母親キーナウ・ワイルダーと交流があったようで、本書にはキモ・マクベイからの謝辞がささげられています。(本書はハンター・スコット少年によりこの事件に再度光が当てられる前に刊行されたもので、その後、再刊された関連書のうちの一冊ということになります)

本書ではドクター・ジャッドの時代にまでさかのぼり、なぜ宣教師の娘がキーナウというハワイ名を持つにいたったかまで触れています。

もちろん、キモ・マクベイの母親は数世代も後の女性です。第二次世界大戦前、有力なワイルダー家の娘として演劇にのめりこんだり好きなことに時間を費やしていたキーナウはパーティでハンサムな海軍士官マクベイと出会います。一目ぼれした彼女と仕官はやがて結婚。まるで映画の中に出てくるような美男美女のカップルであったようです。(実際、キーナウは華のある美女で、ハワイでJunior League of Honoluluが製作した映画、「THE KAMAAINA」(1929)では主役を演じています。戦後になっても「ハワイ5-O」「マグナムPI」に出演、地元のちょっとした有名人といったところですね)

結婚した彼女の新婚生活はワシントン。(時代はずれますが、「珊瑚の涙」でも軍人と結婚してワシントンで生活するハワイ生まれの女性が出てきます。キーナウ・ワイルダーもそういった女性の一人だったわけですね)気ままに育ったキーナウですが、三代続いての士官であったマクベイ家での生活は大変であったようです。特に厳しい義父とはそりが合わず、結局離婚することになります。(実際、マクベイは至極真面目な性格であって、結局、彼女とは合わなかったのでしょう。)

ちょっとだけ触れるつもりが、やはり長くなってしまいました。彼女のことも含め、ワイルダー家の物語は(残念ながら以前触れたテレサ・ワイルダーの悲劇も含め)エピソード満載です。改めて書いていきたいと思います。

上に挙げた以外にインディアナポリス関連の書には以下があります。

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