間が空きましたが、ヘンリー・ジャッドの話題に戻ります。
その前に、NHKbsの「ワールドWAVE」で先日、”ハワイ語を話そう”という話題が取り上げられました。サイトで動画が公開されていますので、観て頂くと幸いです。
→これまでのNews Cafe (1月30日放映分を参照ください)
ヘンリー・ジャッドもハワイ大学の教授であったことは書きましたよね。ハワイ大学の歴史について書かれた「MALAMALAMA」等によるとハワイ大学のハワイ語研究、学科設立はその他欧米アジア系の言語に比べると遅れていたそうです。
先のNHKの番組でも触れられていたとおり、ハワイ語を話す人口は極端に減少しており、純粋なハワイ語が公の場で使われていたのはハワイ人のための教会くらいだったとか。ハワイ語に英語や各国移民の単語、文法を取り入れたピジン語が広まっていましたが、これは労働の場で便利に使われていたからでした。(移民労働者、また、それを使う側との間の共用語として)
初代のハワイ語学科教授はFrederick William Kahapula Beckley、そしてJohn Henry Wise でした。Wiseの引退の後を継いだのがヘンリー・ジャッド。
The Voices of Edenという書が先の番組で登場するラリー・キムラ教授などの論考を引いて、ハワイ語学科は比較的単位の取りやすい学科と認識されていて、多くのフットボール選手がこの学科を専攻したのはそれが理由だったとしています。(フットボール選手が聞いたら怒るかもしれませんね。)John Henry Wiseは最初のネイティブハワイアンの大学フットボール選手だったそうですから、その伝統を引き継いだだけかも。
いずれにしても大学教育の現場において深化が進んでいない学科であったことは確かでしょう。
ハワイ語の教材に使えるものが手に入らない状況で、先生は限られた物を使うか、あるいは自らテキストを作るしかなかったそうです。ジャッドはテキストと辞書を編纂、それらをまとめて「The Hawaiian Languege」と呼んでいたとあります。
彼の回想録によれば1939年に、文法の初歩、読解のレッスン、数百のハワイ語語彙集をまとめたものをスター・ブリティン紙から刊行。浅海の推測ではおそらく上記のテキストをベースにしたものでしょう。手元にあるのは出版社がHawaiian Service Incとなっています。1949年に出版権をGeorge Armitageに譲ったそうなので、最初の版よりも既に10年以上経っている可能性が。右側は同じ出版社ですが、新しく見えますね。(刷り年の記載が無いのではっきりしたことは判らないのですが、ずいぶんと息の長いロングセラーであることは確か)
The Voices of Edenでは幾つかジャッドのこの書の問題点を指摘したうえで、それでも長く使われていたのは、単にこれに代わる教材が生まれてこなかったからだ、と少しばかり手厳しい評価を行っています。
→Kawaihuelani -Center for Hawaiian Language-
→The Voices of Eden: A History of Hawaiian Language Studies