youtubeのUS National Archives チャネルでは以前では容易に観ることが出来なかった動画を無料で観ることが出来ます。いわゆる第二次世界大戦中におけるプロパガンダ映画等がそれにあたります。
『December 7th』はハワイが主要なシーンを占めるものです。このチャネルではShortとLongの二つのバージョンが公開されていますが、見比べてみてください。
long version
short version
見比べると二時間以上要するので忍耐が必要ですが、二つの動画をみて印象がまったく異なることにお気づきでしょう。ロングバージョンではハワイに住む日系人に対する疑念が顕著で、ハワイでの準備不足、予断が印象に残ります。後者では海軍の回復が進み、反撃の準備は整ったことが協調されています。
なぜ二つのバージョンが?
この謎はNetflix 伝説の映画監督 -ハリウッドと第二次世界大戦- を観て解けました。
要するにlong versionでは三つの問題があったため、short versionのみが劇場公開されたのだそうです。long versionはお蔵入りに。
その問題とは
・長すぎる。
・海軍が準備不足であった印象を与え戦意高揚に繋がらない。
・人種差別的である。日系人への偏見を与える。
メインフィーチャー作品と合わせての放映で戦意高揚を狙った軍の意図にはこのlong versionは沿わなかったのです。このlong versionばかり情報無しに観ると確かに反感ばかり感じてしまうのですが・・。
long versionの実質的な監督は「怒りの葡萄」「市民ケーン」の撮影監督であったグレッグ・トーランド。しかしジョン・フォード監督が軍の意図に沿って大鉈をふるったshort versionのみ公開され、1944年度アカデミー短編ドキュメンタリー作品賞を受賞。
この時期、人種差別的との理由で映画が検閲されたというのは意外ですが、1943年にはハワイや収容所からの日系人部隊編制が進んでおり、その情報はあったはず。それらに対する配慮はあったかもしれません。Amazonプライムビデオでもこの両バージョンを観ることが出来ます。long versionの冒頭にはこの作品が公開されなかった理由の説明が付されています。
もっと詳しく知りたい方は「伝説の映画監督 -ハリウッドと第二次世界大戦-」の原作であるMARK HARRIS著「FIVE CAME BACK」をお勧めします。
「日米映画戦」(青弓社,1991)でもアメリカ公文書館のウィリアム・T・マーフィーが「第二次世界大戦下の合衆国政府による映画利用」にてこの長尺版の「12月7日」について触れています。(p.82)
以下も参考に
→TCM Spotlightから「December 7th」
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