特に古書を買ったときに、本そのものとの出会いもありますが、おもいがけず著者あるいは前の持ち主とのつながりを感じる場合があります。
本書もそういった本の一冊で、実際に手にするまで気が付かなかっただけに、ちょっと感激しました。
扉を開けたときに紙が貼られていたのです。これはなんというのでしょう。献本の挨拶が書かれているのですが、献本票とでも呼ぶのかな。
ハワイ在住の作家、ライターに本書で取り上げられたHarriet Bouslogから送り先への挨拶が印刷されています。
挨拶状もサインもコピーされたものですし、送り先の名前もおそらくは秘書、あるいは出版社の方が代筆したものと思われますが、僕はこのHarriet Bouslogさんを尊敬していたので、うれしくなってしまいました。彼女のことは以前にも触れましたね。同じようなことばかり書く悪い癖があります。
彼女は常に弱者の側に立ってきた弁護士であり、特に労働者の側にたっての活動、人権問題での働きで良く知られた人物です。弁護士の理想像がクラレンス・ダロウのように弱者の側に立つことだとしたら(彼は最後の事件でみそをつけてしまいましたが)、彼女こそその理想を最後まで追求した人物です。おそらく当時の権力者には煙たがれたでしょうが、反骨精神の持ち主でした。
重複するかもしれませんが今一度、参考となるリンク先を挙げさせてください。
・CLEAR Biographies of Hawai’i Labor History Figures
・HARRIET BOUSLOGLAWYER, RISK TAKER, AND CHAMPION OF THE UNDERDOG
UNDERDOGを負け犬と訳しちゃうとちょっと違和感あるのですけど、弱者ではまたニュアンスが違いますかね。あるいは犠牲者だけでも言葉が足りないような。
・The Harriet Bouslog Labor Scholarship Fund
特に「In Her Own Words」というページをお読みください。
彼女は本書の扉にどのような言葉を残しているのでしょう。
93年、あるいは95年とも読める日付が記されています。98年に亡くなっていますからいずれにしても最晩年の時期ですね。
ハワイへの愛着と自らの仕事への自負を強く感じさせる文章です。
彼女についてもっとお知りになりたい方はPBS Hawaii制作のドキュメンタリーBiography Hawaiiの中の「Harriet Bouslog」DVDを視聴されることをお勧めします。(リージョン1であることが難点)。当たり前ですが全編英語なので僕はすべて理解したとは言えません。しかし英語字幕付きなので、僕よりも英語が得意な方であれば理解できるはずです。
このドキュメンタリー中、Harriet Bouslogさんの人生とその功績、時代背景について証言しているのが「Called from Within」の編者であり、Harriet Bouslogさんの項を担当しているMari J. Matsudaさんです。非常に力のこもった解説で思い入れの強さが良く伝わってきました。本書と合わせてぜひ、手に取ってみてください。