「ドット・コム・ラヴァーズ」を読んで

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「ドット・コム・ラヴァーズ」を読み終わりました。本当に面白かった。

うまく整理できていないのですが、感想というか思ったことをずらずら書かせてください。

1.せまく小さな社会

読んでみるとオンライン・デーティング・サイトで出会ってからの展開はニューヨークとハワイでは大きな違いがあるわけではありません。ただ、その背景で特徴的であるのはハワイが物理的に狭くてかつ人間間の距離も密な小さい世界であるということでしょう。その狭さが著者が相手に求めるレベルの母集団を小さくもするし、そしてインターネットで出会う以前にみじかに存在する人物だったりもするのです。

この狭い世界が著者に困惑と時には恐怖を味合わせたりしています。その恐怖とはストーカーまがいの相手からコンタクトを取られてしまった体験。執拗にコンタクトを取ってくる人物が、じつは身近に居る人物であったことが判る場面は、下手なホラー映画を読むよりも怖かったりします。
2.自己アピールのツール

インターネットによるデーティング・サイトは本書を読むかぎりけっしていかがわしいものであったり特殊なものではありません。自分の相性に合う異性、または同性との出会いの機会を得る効率の良いツールなのです。このツールは出会いと同時にプロフィールとそれに対するコンタクト方法で自分をアピールするチャンスを与えるものでもあります。

チャンスを上手く手にするのは相手のプロフィールを的確に読み取り、その社会的背景、知的関心の範囲などを把握、それに対しウィットに富んだ形でコンタクトを取れる人物なのです。
3.成功の秘訣

本書、そしてハワイ編の最後に登場するエピソードの男性は上記のハワイという土地の特性(緊密な社会)とツールの特徴をうまく活用した例と言えるでしょう。なにしろ、彼はサイト登録前に著者のことを知っていたのですから。彼は著者に事前に興味を持っており、著者にコンタクトを取るためにサイトに登録を行った人物だといいます。ここだけを聞くと先に登場したストーカーと紙一重に感じますが、結局、本人の人間的魅力と機知、センス、知性に大きな違いがあるのですね。

4.本書に現れたハワイという社会

本書のなかで著者はハワイを以下のように描写しています。ハワイ体験が少ない浅海でも、なるほどそうであろうか、と思う内容です。

・ローカルと非ローカル

 地元の人々のネットワークは土地の狭さに所以する以上に密であり、それはおそらくハワイの歴史に由来するのだ、と著者は考察。たとえ数十年をハワイで過ごした人物であってもそのネットワークのなかに、ハワイの社会のなかに受け入れられたとは感じられない、つまり「ローカル」と「非ローカル」の間には厳然とした眼に見えない境界があるのだ、としています。ハワイの人々のアロハの精神、移民を受け入れてきた歴史からそれは露骨に表には出ることは無いが、歴然と存在するのだといいます。(著者は外部の者に良いようにされてきたハワイの人々が外部の人々に持つ気持ちの表れなのだろうとしている)
加えてローカルの間でもハワイ先住民とアジア系移民との間にも、日系と労働者階級の職業についているその他フィリピン系などの人達との間も一筋縄ではいかない複雑な感情があり「楽園のイメージからは想像しにくい複雑さが」ハワイ社会には有るのだと著者は書いています。

・ハワイに居る理由

 ハワイで著者が出会う男性もローカル、非ローカルで大別できます。(明確でないものもありますが)。著者が紹介する例は非ローカルのほうが数として多いようですが、それらの人物がハワイに居る理由も、ハワイという社会を反映しているようで面白いのです。労働運動であったり、環境問題であったり、軍関係者であったり・・・。

そういう意味で、本書は現代ハワイを構成する人々の(まだ偏りは大きいのでしょうが)人物(男性)カタログとしても読めそうに思います。

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