「珊瑚の涙」:書き忘れたこと

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以前の「珊瑚の涙」で書き忘れたことがありました。

読んでいて「なるほど」と思ったこと。本書ではハワイの土地問題が重要な背景の一つなのですが、その土地に関わる問題として水の供給に触れていることに関心を持ちました。以前にも書きましたがサトウキビ耕地にせよ、牧場にせよ、水の供給というものが大きな問題で、その確保は公の組織ではなく、地主、耕地主に任されていたのだと思います。おそらく地主もそこで生活する人への水の確保は、みずから解決するものという意識があったのではないでしょうか。

ただ、そのぶん、ハワイ先住民の従来のライフスタイルであれば、本来であれば頼らずに済んでいた水の供給を地主に大きく依存することになったのではないでしょうか。

これはこじつけかもしれませんが、最近のモロカイ・ランチの運営停止に伴う水問題も、本来は州あるいは郡政府が行うべきインフラ整備を一私企業に依存していたという実態の表れなのかもしれません。つい、そこまで連想してしまいました。

あと、もう一つ。シリーズのあとがきにありますが、本書の著者、ジャニータ・シェリダンさんってなかなか凄い経験をしているのですね。現在、リプリントを行っている出版者のサイトに彼女の略歴が掲載されていますが、確かにこの時代、女流作家として生きていくためには質屋と顔なじみになるくらいでないといけないのかもしれません。

ハワイではさまざまな経験をしているようですが、もったいないことにそれを作品にすべて盛り込むことはしていないようです。先のサイトにはこんなことが書いてあります。『ハワイでもっとも面白い友人の一人に”売春宿”のマダムがいた。まるで学校の教師のような外見で、眼鏡をかけ、ニューイングランド訛りの英語を話した。立派なレコードのコレクションと蔵書をもっており、26歳という年齢にも関わらず、彼女の年収は高級取りの重役クラスのはるか上をいっていた。彼女の家をしばしば訪れて、そこの女の子達から信用されるようになると、印刷できないような(誰も信じないような)彼女の一代記を聞かされることになった』。うーん、知りたい!

彼女の作品で注目すべきはハワイを舞台にしてくれたこともありますが、中国系の女性を探偵役にしたことです。ハワイを舞台にして、このリリー・ウー・シリーズをテレビ化する話があったようですが、この記事からすると製作までには至らなかったようですね。残念です。実現すればチャーリー・チャンに変わる東洋人探偵が映像化されたでしょうに。(当時のハリウッドではあまり期待しないほうが良いのかもしれませんが)

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