星新一 一〇〇一話をつくった人

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「星新一 一〇〇一話をつくった人」を読み終わりました。本書を読むまで星新一さんの娘さんがハワイに住んでいることも、星さんの最後の旅行先がハワイであったことも知りませんでした。いや、まあ、それはどうでも良いことです。

僕は小学生の6年くらいから「SFマガジン」を購読、旧「奇想天外」も新「奇想天外」も買っていました。本書で紹介されるいくつかのエピソードは知っていましたが、星さんの生涯にそって、また、SFファン以外の読者を想定して構築しなおされた日本SF創世記の物語は新鮮でした。これもやはり星さんが築きあげた広い層の読者があってのことと思います。

僕も著者と同じようにいつか星さんの本を手に取らなくなり、SFも読まなくなりました。雑誌などで「浸透と拡散」が言われていたのを記憶していますが、確かに今は昔であればSF、ファンタジー小説と呼ばれていたであろうものが書店で普通に並んでおり、映画もSFらしい設定が無いものを探すほうが難しいくらいです。それに比べたら当時はどうでしょう。中学の図書館で「SFマガジン」のバックナンバーを読んだ時、宇宙人やUFOを小道具にしたCMが放映されただけでもコラムのネタになっているのに(当時でさえ)びっくりしたものです。ファンや作家が群れたくなるのも判るでしょ。

その中で独自の発想をショートショートという形式で、しかもそれをあらゆる世代、後の世代に読まれるよう最後まで苦心されていたという本書の星さんの姿に胸打たれるものがあります。今一度、星さんの本を手に取ろう。そう、思いました。

何十年後、いや、何千年後の未来、ひょっとして違う星で、まったく異なる言語、フォーマットで、星さんの創造した物語が語られることもあり得るのかもしれません。その時、星さんの名前は忘れられているかもしれませんが、物語はずっと生き続けているのです。

2件のコメント

  1. おお、「ボーイズライフ」。名前はよく目にする雑誌で、でも実物を見たことが無くて。確かにこの雑誌について本書でもふれられていましたね。
    リアルタイムで出会えて羨ましいです。当時の雑誌への読者の思い入れは今と比べものにならないですよね。

  2. こちらにも書かせていただきますね。
    先日、少年期の話を伝える機会があったのですが、
    ぼくもこのとき星新一に少なからぬ影響を受けたことを伝えました。ぼくの場合は主に「ボーイズライフ」という雑誌に綴じ込みで入る彼の書き下ろしでした。その彼がハワイ繋がりとしてちょっと驚きました。

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