真珠湾攻撃と祖父(2)

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先の書き込みに続く内容になります。ハワイの収容所に触れる前に、先の真珠湾攻撃報道と同様に、本ブログで祖父について触れるようになってから頂いた情報についてかいつまんで書かせて頂きます。

・あるオークションサイトで祖父に贈られた潜水艦母艦「大鯨」の木製モデルが出品されたこと。

・箱書きに祖父、浅海庄一に、大鯨艦長であった中邑元司 海軍少将から贈られたよしの墨書があるとのこと。(写真でも確認させて頂きました)

・出品者の情報によればハワイの廃屋の屋根裏相当の場所から発見されたものとのこと。

・モデルと一緒に「聖徳記念絵画館 壁画集」が見つかっていること。(1932年刊行。英語版も1933年に刊行されているとのことですが、発見されたのがどちらかは判りません)

中邑元司海軍少将が大鯨艦長の任にあったのは1939年11月15日~1941年4月10日までであったとのこと、つまり真珠湾攻撃が迫っていた時期であったという情報も頂きました。中邑元司海軍少将は潜水艦の専門家であったことから、このモデルを入手された方も、それから情報をよせて頂いた方も、真珠湾攻撃を受けて、あきらかに軍事的要素の強い品々が隠された可能性を指摘されていました。

その可能性もあります。

以前にも書いたことですが、父は青波という名前で歌集を発行するくらいですから、船を愛し、海を意識していた人物。父も祖父が日本帝国海軍の訓練船が入港すれば、その度に艦船を訪問。父も同行したことがあったそうです。同時代の新聞人の回想を読むと、訓練船の動向、メンバーも立派な報道材料であったようですから、単に艦船を愛していただけでは無いかもしれませんが。父は「艦船を頻繁に訪問していたから当局(FBI)にチェックされていたのだろう」とも言っておりました。

布哇報知の記者であった方の回想にも、海軍訓練船への取材で真珠湾などに出入りしていた記者は厳しい取り調べを受けたとの記述があり、祖父が新聞人であった以上の要素でリストに載った可能性もあるかもしれません。

周防大島の移民資料館で閲覧させて頂いた1988年10月25日ハワイ報知の『ハワイの「抑留」過程』という記事では「1936年から名簿作成 真珠湾の日、13チームで逮捕」とあり、ルーズベルト大統領が1936年8月10日の時点ですでにレーハイ海軍作戦部長に『オアフ島にある日系人・日本人で、日本の艦船を歓迎し、あるいはその将兵たちと関係のある者はすべて秘密裡に調査してその身元を洗い出して特別リストを作製し、もし紛争が起こった場合にはこのリストに乗ったものは最初に強制収容所に送り込むようにしたい。』との指令を発していたとしています。ただ、同時に記事中では「この大統領指令がどのように実行されていたのかは不明」ともしていますが、1936年の時点で大統領がこのような意識をもっていたことは「日本人日系人抑留問題を考えるうえで記憶されるべきであろう」としています。

さて、果たして祖父がこの「大鯨」模型を隠していたのでしょうか。その後、母に聞いた話では、祖母がハワイからアメリカ本土の収容所に家族そろって行く際に、アルバムなどの思い出のつまったもの、大切なものはハワイに残る知人に託して行ったそうです。以前書いた祖父の記事の切り抜きもおそらくそうして残されたものだったのでしょう。その後、祖母達がハワイに戻れたときにほとんどは回収出来たと思われますが、例えば託した知人が移転したりして、そのままになった品々もあったかもしれません。そして、これら模型や壁画集もそれらに含まれていた可能性もあったでしょう。ひょっとしたら隠す意図が(本当にひょっとしたら)あったかもしれませんが、燃やしたり埋めたりしなかったことは確かです。

ここで念のため書かせて頂きますが、(父が繰り返し僕に伝えていたことでもあります)その後、当局の調査でも民間日系人にはアメリカへのサボタージュの動きは一切無かったことが報告されています。海軍においても厳密な情報統制が有ったとのことですから、父が特別に真珠湾攻撃についての事前の知識が有ったとは思えません。むしろ、おつきあいのあった軍関係者からそのようなことは否定されていたと思われます。

ふうう、また収容所まで行き着きませんでした。疲れてしまいました。これからNHKのドラマを見ます。「真珠湾からの帰還」の酒巻少尉もキャンプ・マッコイに収容されており、「配所転々」の著者、古屋翠渓さんも声を掛けた由記述があります。サンド・アイランド、キャンプ・マッコイ、キャンプ・リビングストンと一緒であったようですが、祖父と会話する機会があったのかどうか。ただ、古屋翠渓さんの著書によれば酒巻少尉の目には日系人は「アメリカ人」的だという会話が有った由。

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