D. Howard Hitchcock: Islander

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あああ、もう。

しばらくぶりにホノルル・アカデミー・オブ・アーツのサイトを見ていて、愕然としてしまいました。D. Howard Hitchcock: Islanderという本が売られているじゃないですか。この本の説明にありますけど、長く品切れで古書価が数万円もしていた本なんです。わたしったら数年前に自分としては大枚はたいて買ってしまった本なんで・・。ちょっと悲しい。コレクターじゃないんで、読めればリプリントでもなんでも構わなかった・・・。

ハワイの絵画に興味有る方はD. Howard Hitchcockという画家をご存知かと思います。ハワイの絵画は、まあ、当たり前ですが油絵などは海外から訪れた画家がハワイの風景、事物などを「見出し」、題材にしてきたものが主でした。D. Howard Hitchcockはハワイ島生まれ。ハワイ生まれで初めて成功した画家としてハワイの絵画史に名前を残す人物です。主に風景画、特に火山を描いたものが有名です。

Hitchcock家はハワイ島でやはり宣教師にその祖をたどることのできる一家。ハワイの歴史をたどるとたびたびその名前を見ることができます。以下に書くことは一部推測が混じっていますが。まず間違いはないでしょう。

このD. Howard Hitchcockの父親はハワイでもっとも歴史をもつ法律事務所を開設した弁護士でした。どこかで名前を見たことがあるなあ、と思っていたら、後藤潤殺人事件の裁判に関わっていたんですが、その話は長くなってしまうのでまた別途。

もともと芸術に理解が有ったのでしょう。彼はパリからアメリカ本土に、そしてハワイに渡って来た画家、Jules Tavernierの面倒を見ます。借金まみれの画家がハワイで病に倒れたところを哀れんでのことでした。Jules Tavernierは雑誌社の依頼でアメリカ東海岸から西海岸へとアメリカ各地の風景を描いて来ており、インターネットで検索するといくつかの作品を観ることが出来ます。彼はその経験から「売れる」題材を見極める眼をもっていたと僕は思うのですが、ハワイの火山をテーマにした絵である程度の成功を収めることになりました。(明治天皇への贈り物として彼の絵が売れたことがあるそうですが、それが実際に明治天皇に送られたのか、日本にまだ存在するのか、は調べきれていません)

さて、Hitchcock家で世話になっていたJulesは、一家の息子D. Howard Hitchcockが描いたスケッチを見て、その才能を見出し、両親に彼の才能を伸ばすよう提案します。父親はもちろん弁護士をついで欲しかったのでしょうが、息子の希望をきき、パリ留学を許します。(代わりに娘がハワイで最初の女性弁護士となり事務所を継ぎますが、早くに亡くなり、法律事務所に名前を残すことはありませんでした。)

ハワイに帰郷したHitchcockは師匠であるTavernierにならい火山の絵で有名になります。アメリカの博覧会などにも絵が展示され、先にも書いたとおり、ハワイ生まれで初めて全国的、世界的に名前の売れた画家となったのです。

自分がこのD. Howard Hitchcockに興味があったのは、もちろん、風景画が好きだということもあったのですが、実はジャッド家の一員であったということからでした。

D. Howard Hitchcockの妻となったのはカラカウア王と一緒に世界をめぐり、日本にも訪れたチャールズ・ジャッドの血を引く女性でした。後藤潤殺人事件の裁判で裁判長を務めたA.F. ジャッドが彼女の後見人の一人であったそうですから、この結婚も彼の引き合わせであったと僕は考えています。(同じ法曹界にあって、宣教師を祖に持つという背景も一緒ですからね、特別親しみを持っていたのではないでしょうか)

このD. Howard Hitchcock: Islanderという画集、伝記を編集したHelen Hitchcock Maxonは彼の娘であったと記憶しています。ですから、この本もドクター・ジャッドの血を引く者が著した本の一冊ということになりますね。

The Academy Shopはオンラインでは日本からのオーダーに対応しておらず、毎回、欲しいものがあっても断念していたのですが、今回、注文を受け付けてくれるか問い合わせしてみようと思います。

(すみません。短めにまとめようと思ったんですけど。関連するエピソードが多くて・・・。興味の無い方にはまったく面白くなかったですね)

D. Howard Hitchcock was the first homegrown artist in Hawai’i …

Cedar Street GalleriesからHitchcock作品

WikipediaからJules Tavernierの項

Mauna Kea Galleriesには二人への詳しい解説があります

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