青山南さんの講演「色とりどりのハワイからの文学―移民とか戦争とか火山とか海とか」を拝聴しました

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東洋文庫ミュージアムの講演会、青山南さんの「色とりどりのハワイからの文学―移民とか戦争とか火山とか海とか」を拝聴しました。

浅海が青山南様をハワイ文学の紹介者として意識したのは本の雑誌のコラム、HNKの初歩の英語テキストコラムだったと記憶しています。本の雑誌のコラムはどちらかというと南米の話題が中心だと記憶していましたが、時折、ハワイの話題が混じりました。

僕の大好きな「ワイルドミートとブリーバーガー」の話題も当然期待して拝聴した次第です。

ハワイ文学、青山さんはまず、ハワイの文学を
・文字に残されなかったもの(フラなどの口承によって伝えられたもの)
・主に英文を使って書き残されてきたもの

と二種に分け、今回のテーマは後者について述べるものと明確にします。ここは重要なところです。

始まりは白人観察者が残した記録、エッセイ、小説から始まります。

マーク・トウェイン、ハーマン・メルビル、サマセット・モーム(面白いのは宣教師への批判的な視線が共通しているような気がします。トウェインはちょっと違うかもしれませんけど)

ジャック・ロンドンはコオラウの物語をまるで「ランボー」のようなアクションを交え物語ます。(ご存知のとおり、これは実際にあった出来事がベースになっています)

青山さん、未確認と断られていましたが、ロンドンの最後の作品(絶筆?)はハワイが舞台で、かつ日系人の少女が主人公であったらしいとのこと・・・。

「地上より永遠に」
映画では様々な人種からなる売春婦、愛人らの描写がバッサリと削られていることを指摘されていました。(自分、読んだ記憶はないのですが、なんだかうっすらと蘇ってきました。なにかの評論で読んだのでしょうか。そういえば文庫をそろえたのかもしれません。たしかに長大な原作だった・・・。うーん)

マウイ島の盆ダンスで日本人の顔をしていながら英語を使う人々にであい、また、日本の盆踊りとは異なる独特の雰囲気をきっかけにハワイローカルの文学に興味を持たれた青山さん、ハワイ大学などで探し始めます。

長くなるので以降、触れられた作品を挙げるだけに留めます。

・All asking is my body ミルトン・ムラヤマ著
第二次世界大戦で日系人社会が大きな影響を受けたのか。「地上より永遠に」では描かれない日系人社会、若者の葛藤が描かれる。
親の世代から教えられてきた「大和魂」「サムライ」とだまし討ちに等しい真珠湾攻撃、今まで教えられてきたことはなんだったのか。敵としてみなされ、悪意あるうわさに翻弄される日系人の家族。(本棚のどこかに有ると思います)

・Tolking to the dead  シルビア・ワタナベ著
死者を弔う魔術師的な「おばさん」に弟子入りした女性。どっちつかずであやふや。その周辺の人々が主人公となって語り継いでいく連作短編集。それそれ日常的な苦悩などを抱えているのに、マジック的なところもあって、すごく魅力的。翻訳があったら是非読みたいです。

・「神々のハワイ」 スザンヌ・ムーア
各国の文化にそったピジン英語の解説がある。おそらく今も早川の翻訳が入手可能なはず。

Pass On, No Pass Back  Darrell H. Y. Lum
ピジン語だらけの中国系のローカル作家の短編集。表紙からユーモラスな雰囲気。青山さんですら、意味が分かったと言えるのは一編だけとのこと。これは翻訳は難しいか。(表紙には「PEA (Pidjin-English Association)認定」とあると示して、青山さん、ニヤニヤしていました。あははは)

僕の知る限りDarrell H. Y. LumはBamboo Ridgeの中心的な人物で、この方がいなければハワイのローカル文学はここまで注目を浴びなかったのではないかと思う。

・Volcano ギャレット・ホンゴウ

本土でピジンの使用を固く禁じられて育った著者が生まれ故郷ハワイに戻る。

ワイルドミートとブリーバーガー ロイス・アン・ヤマナカ

白人や日本人への憧れとも違う少女の思いがどこかユーモラスに語られる。やはりピジンや日本由来のことばが頻繁に混じる作品。翻訳だとその面白さはなかなか伝えきれないと青山さん。

この作品以降、ヤマナカさんの作品は暗さを増し、どこか鬱屈したものを感じさせるとのこと。(浅海、辞書を引きながら、同じ著書の「Blu’s Hanging」を読もうとしたことありますが、無理無理。2ページくらいで断念しました。英語力もさることながらやはりピジンの部分がネックです。辞書に載ってないですもん。Webでいろいろ調べられるようになった今でも一苦労と思います。)

お気づきのとおり青山さんは現在ローカル文学の魅力の多くがこの「ピジン」によるものであることを強調しています。となると、日本人がこれを楽しむのはなかなか難しいかもしれません。

また、ローカル文学の難しさとしてマーケット、全体に占める人口比の問題も触れられていました。やはり作者が背景とするエスニックな文化を背景とした人種構成比が作品への着目度に影響を与えるだろうと・・・。

自分が購入したときは6000円でしたが、なんじゃこの価格は?

・講演で触れられた「さよなら、ジャック」「ハンセン病患者クーラウ」のほか「チュン・アー・チュン」といったハワイ・南洋物が収められています。

 

 

 

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